「怪盗ディモンシェとモミの木の少女・解答編」
プロローグ
「こんな言葉を知ってる?『記憶なんて泡みたいなもの、
ちゃんとガラス玉にしないと消えてしまう』って。」
「…」
「知るわけないよねっ。だってボクが考えた言葉だもんっ。アハハハっ♪」
12月になってようやく寒さを感じるようになったある日、
私は行きつけの店のオーナーさんに、手助けして欲しいことがあると呼び出された。
その店の名前は「茶荘 歩香」と書いて「ちゃそう あるこ」。
私もほかの客も「歩香(アルコ)」と呼んでいる。
簡単にこの店を紹介しておくと、「大きいお兄さん」「メガネのお兄さん」と呼ばれている
オーナーさんが2人で経営している、住宅地の一角にこぢんまりと佇む小さな…
ほんとに小さな喫茶店なのだ。
扱っているのは「中国茶」でコーヒーは置いてない異色店だけれど、
まぁ「喫茶店」ということにしておこう。
私はその、下手をすると誰の気にもかからないであろう店の常連客なのだ。
(と、勝手に思っているだけなのだが…)
店に行くと、まあ大概予想通り自分の他にお客がいないことが殆どで、
それをいいことに長居して、二人とダラダラ他愛もない事をしゃべるのが好きなのだけれど。
ある日、珍しくそんな店のオーナーから
「是非手助けをして欲しいことがあるから来てもらえないか?」と私のところに連絡があった。
なぜ私なのかは、話を聞くまでまったく見当がつかなかった。
軽い疑問を抱きつつも、いつものように歩いて店へ向かう。
入口には最近発行したらしい「あるこ旬報」という手作りのフライヤーが置いてあった。
ロゴには、歩香を象徴しているという「あの子」という名の女の子をあしらってある。
旬報の入った紙袋には、手彫りのクリスマスモチーフの消しゴムスタンプが押されている。
おそらく、歩香のクリスマスメニューなどのお知らせが中に書かれているのだろう。
1部手に取りながら、「あぁ、もうクリスマスかぁ。」と独りごちる。
ついこの間、歩香でハロウィン気分に浸ったばっかりだったものだから、
時間の流れの速さに軽く眩暈を起こしつつ店の扉を開けた。
客席の真ん中に鎮座するクリスマスツリーが真っ先に目を引く。
そう広くない店内がこの時期だけのクリスマスデコレーションでいっぱいだった。
そして、その煌びやかな雰囲気の中で宮沢賢治の「星めぐりの歌」が流れていた。
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