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「怪盗ディモンシェとモミの木の少女・解答編」
          プロローグ


「いらっしゃいませ、こんにちは。あ、これはどうも。」
作り笑顔がちょっと下手なメガネのお兄さんがカウンター越しに声をかける。
うん、やっぱり相変わらずの私ひとり。
ちょっとさみしいような、でもホッとするような変な感覚だ。
2人席の壁側に当たり前のように座る。暗黙の了解で案内はされない。
独りの時は必ず陣取る落ち着く場所。

「あぁ、こんにちは。すみません、お呼び立てしちゃって。」
奥の厨房から、仕切り布を開けて大きいお兄さんが現れた。
「いらっしゃって早速で申し訳ないですが、お願いしても大丈夫ですか?」
とお冷を出しながら切り出された。

「以前、謎解きとか大好きで、そういうイベントによく参加されているって、
たしか、おっしゃっていましたよね?」
と聞かれ、ええ、と頷く。
「実はこの前、店内にクリスマスの飾りつけをしようと倉庫を漁ってたら、
こんな変な箱を見つけちゃいましてね…」
そう言いながら、メガネのお兄さんがカウンターからひとつの箱を出してきて、
まだよく呑み込めていない私の前に置いた。

そのへんに普通に売ってありそうな、なんの変哲もない紙製の箱。
開けてみてくれと促され、そっと開けてみる…と、
中には7・8枚の写真と何かが書かれた紙きれが数枚、鍵のかかった小さな木箱、
そして星座の早見ができる天文盤が入っていた。

大きな紙箱の中身

「この中身だけでも謎なんですけど、紙に書かれている内容や写真の中に
不自然に写りこんでいるものがね…」
「さらにこの天文盤でしょ?さっぱり訳がわかんなくて頭抱えてたんですよ。
で、ふとあなたが謎解きをお好きだってことと、先日うちでおこなった
『茶荘歩香からの挑戦状』で見事に全問クリアをされたのを思い出したので、
お呼び立てしたってわけなんです。」
お兄さん方は、どうしたものかと困り顔のまま、そう私に言った。

「なるほど、そういうことだったんですね。
わかりました。じゃぁ、ちょっとチャレンジしてみますよ。」
謎と聞くと解かずにはいられない性分の私は、
もしかするとお兄さん達に担がれているのかもしれない…と思いながらも、
写真や紙切れに見え隠れしている謎への好奇心には逆らえず、
2人へ承諾する返事もそこそこに謎解きに取り掛かった。

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2013年12月
    談話室イベント
 「怪盗ディモンシェと
     モミの木の少女」

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