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「怪盗ディモンシェと時ノ旅ビト・解答編」 ~プロローグ~

小一時間ほど軽い食事とおしゃべりで過ごす。

そろそろ時間じゃないかな?そう思い、客車の中を見回したが時計が見当たらない。
仕方なく自分の腕時計を見ると、あと10分ほどで出発の時間になっていた。
ちょっとした未来を覗けるのだろうか、それともちょっとした過去なのか。
小一時間の旅だという話だったから、私は大きくは期待しなかったけれど、
子供のころの遠足の時のような、小さなワクワクは心の奥に感じていた。

アナウンスを知らせるチャイムが鳴り、女性の声で案内が流れる。
「この列車は14時30分発 アルコニア624号 特別運行列車で…『ガガッ』」
と、アナウンスを遮るようにラジオノイズのような雑音が入った。

『やぁ、ボクは怪盗ディモンシェ♪
 これから時渡りの汽車に乗って旅をするんでしょ?
 いーなー、うらやましーなー』

突如しゃべり出した謎の声に、私を含め乗客はキョトンとしている。
あっ!私はつい声に出して小さく叫んでしまっていた。
「怪盗ディモンシェ」って、あの時の、姿の見えない輩じゃないか…。
あまりに突然のことで呆然としてしまい、気付くのに時間がかかった。
しかしそんな乗客を尻目に、その姿なき怪盗はお構いなしにしゃべり続ける。

『と、いうわけで、この列車のダイヤをぬっすんじゃいましたぁ♪アハハ♪』
は?ダイヤを宝石か何かと勘違いしているのだろうか?いずれにしても、
どういう訳でなのか、小一時間ほど問い詰めてやりたい気分になったが、
そんな客車内の空気もどこ吹く風、姿なき声はまたもお構いなしに続ける。

『ついでに、停まる駅の順番も変えちゃった♪エヘ♪
 そうだ、みんなにもボクの新しいダイヤ作りを手伝わせてあげるよ♪
 みんなが持ってる【運行表】も書き換えておいたから、
 空いてる部分をボクが出す謎を解いて全部埋めてねっ♪
 ただ解いても面白くないから、もちろん制限時間つきっ♪
 キミたちが旅をする1時間キッカリで解いてみせてっ♪』

さっき確認した運行表をもう一度手に取り見直してみる…。
途中の停車駅名と到着時刻が空白になっていて、ご丁寧に「?」まで付いている。
そして同じく渡されていた旅の資料が全て、怪盗の言う謎解き問題に変わっていた。
やっぱり面白半分に謎を解かせようとしてるのか…。まったくこの怪盗は…
そう苛立ちを隠せずにいると、アナウンスを告げるチャイムが鳴った。
「まもなく、14時30分発 アルコニア624号 特別運行列車 が発車いたします」
いつのまにかモニターには制限時間らしき【1:00】の文字が表示されていた。

『もうそろそろ出発だよ♪
 みんな頑張ってね~、それじゃぁ、出発しんこ~~~~~うっ♪
 そして、謎解き開始~~っ♪さぁみんなで考えよ~~うっ♪』

その有無を言わさない無邪気な声と同時に、この時渡りの汽車は汽笛を上げ、
ゆっくりと周りの風景を白く霞めながら動き始めるのだった。

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